2022年8月・ワークショップと本公演
8月2日、演劇体験ワークショップを行います。
1日2時間の体験で、10分ほどの作品を作り、衣装を着け、照明・音響ありで発表するまでを経験いただけます。
ワークショップの芝居作りでは「即興劇」の手法を使います。それぞれの参加者がやりたい役を考えて集まり、その役として他の人と話をすることが「演劇」になります。つまり、ごっこ遊びです。
剣で戦いたい男の子と、ケーキを作りたいお姫様が出会って、何かを話しはじめる。この2人だけのお話でも10分後、どんなお話に展開していくのかわかりませんが、るびのワークショップは毎回、5人ほどが参加します。さらに宇宙飛行士や忍者、ニート、小学生役などが出て来ますから、るびのスタッフも当日、幕が下りるまで、どんなお話が出来あがるか全く予想がつきません。
この「即興劇」の手法の良さは、台本を覚える必要がなく、自分の心から出てきた言葉をそのまま言うので、「もう一度同じことをして」と頼んでも出来ることです。
しかも、全員が関わって出来るので、全員が「自分が作った」と満足できます。
演劇と言うなじみのない活動に見通しのないまま参加をはじめるのは、特性を持った子どもにとってしんどいことです。
このワークショップで、「演劇、割と楽しかった」「やってみたら難しくなかった」とわかってもらえれば、新規の利用を考えている子どものために良いと考え、開所当初から続けて、もう8回目になります。
これまでのワークショップの様子は 「活動記録」に掲載しておりますのでご覧ください。
このワークショップの受付は終了しました。次回は2023年1月に予定しています。見学の受付は随時行っています。
5月リーディング公演を終え、8月の本公演に向けて練習を進めています。
年に一度、一般のお客さんにも公開する8月「本公演」は、今年で2回目になります。
本公演では当初から、脚本・演出・舞台・衣装・音響・照明ほか、子どもが「やりたい」と言った仕事はすべて、子どもたちに任せています。ここにある公演チラシも任せました。
昨年からいる子どもたちは、自分たちで試行錯誤しながら進めることに慣れ、上手く練習が進まないことにくじけにくくなり、大人に頼ろうとせずに自分たちで活動を進めようとするようになってきました。
はじめて本公演を経験する子どもたちは、問題が起きたとき、自分で解決しなければならないことがわからず、「なんでここの大人は何にもしてくれないんだ」と怒ったり戸惑ったりしています。「大人がやってくれるのが当たり前」と言う感覚が、「るびの大人は何もしないから、あきらめて自分たちでやるしかない」と思うまで何もしない(フリをする)のがるびの支援の第一歩で、これに1~2か月かかります。「なにに困っているの?」「どうしたら解決できると思う?」「このうち、どれだったら取り組める?」と聞いて後押しする支援の前に、「これは自分の問題だ」と自覚してもらうことがどうしても必要です。
そして、その問題の原因ですが、「子ども本人が、相手に伝えていないのに、相手にやってもらいたいと思っているから」である場合がほとんどです。「こうなったらいいのに」と思って、そうならないことに一人で怒っている子どもを、るびの中でよく見かけます。
「そんなの当たり前だろう。やって欲しいことを言わずにわかってもらうのは無理だろう」と大人は考えますが、特に自閉傾向のある子どもにとって、人と関わることは大仕事なのです。そして自分が怒ってみせ、先生に言えば、先生が代わりに動いてくれることを知っています。
……ですから、大人がこれを解決するのはとても簡単です。「〇〇くんはこう思ってるんだって」と、みんなに伝えればよいのです。
しかし、それをしては子どもの成長は望めません。「先生、どうにかして」と言って来るのを待ち、話を聞き、「いい考えだ」と賛同して、「いい考えだからみんなに伝えて」と言い、「それは無理」と返ってくれば「みんな集めれば言える? それが無理なら先生がみんなに伝えたあと、補足できる?」と聞いていきます。これを繰り返していくうちに、自信が持てるようになると、子どもは自分からみんなに伝えるようになります。また、これがるびのスタッフの「何もしていないフリ」です。スタッフは大変上手に子どもを放っている「フリ」をしてくれています。
相手に話しかけてやってもらいたいことを伝え、相手の意見を聞き、合意を結ぶと言う、るびの子どもたちの特に苦手とする解決策は、それさえしてしまえば大体の問題は簡単に解決する、とても便利な解決策でもあります。「解決した!」「便利!」と実感して、慣れてしまえば、コミュニケーションをとり、相談することが当たり前になっていきます。
「練習に来ない人がいる」「自分のやりたい芝居に出てくれる人が集まらない」など、演劇をすると、大小さまざまな問題が起こります。
「練習に来ない人がいるから困る、嫌になった」「先生、私のやりたい芝居に人を集めてください」と、問題が持ち上がるとまず、子どもはスタッフに言いに来ます。
「来ない人になんでか聞いた?」「やりたくないと言っていた人はなんて言ってた?」と相談に乗り、スタッフは問題点を指摘します。「聞いてない」「いじめっ子役を、全員がイヤだと言う」。……なるほど。スタッフはこのあと、ものすごいアドバイスをするわけではありません。
「どうして練習に来ないか聞いといで」「いじめっ子役なしで話を考えて、もう一度聞いといで」。対話を続けることを促し、落としどころが見つからなければヒントを出せばいいのです。
解決したら自力で出来たことを褒めて、次の困りごとを持ちかけていたときに「この前出来ていたから、またやってみて」と言えば、大人抜きで、子どもたちで活動が進みはじめます。
大人抜きで活動が進められると言うことは、その人たちは、もう、大人ですよね。
るびは、「学校卒業後に先生がいなくても、支援者が減っても、親がいなくても、生きていける力をつける」ことを目指していて、そのために演劇を使っています。
あと一か月で本番です。
あいかわらず、大人の目から見ていると間に合うのかとハラハラしますが、口を出さないように頑張っています。